titlevar
sub title

沖縄健康酢にはクエン酸がたっぷり

photo
いしかわのぶお
石川信夫
醸造研究家・61才
photo プロフィール
 農学博士。昭和18年、福島県の酒造家に生まれる。専攻は醸造学・発酵学。東京農業大学教授。
 財団法人日本発酵機構余呉研究所所長。国立民俗学博物館共同研究員。著書に「銘酒誕生--白酒と焼酎」(講談社)、「発酵」(中央公論社)など多数。
こいずみたけお
小泉武夫


沖縄の人たちの長寿の秘密に関心が集まっています。”クエン酸”摂取も理由のひとつでは、と仮説を立てるのは、東京農業大学教授の小泉武夫先生です。沖縄の銘酒・泡盛を蒸留したあとに残る、クエン酸たっぷりのもろみ酸でアルカリ性食品『沖縄酢』を造る石川信夫さんと小泉先生が沖縄のクエン酸文化を語り合いました。
クエン酸には強力な殺菌と疲労解消効果が

小泉
 私が所長をしております「日本発酵機構余呉研究所」は21世紀へ向け、環境や健康、食糧の問題を解決する目的で、”善玉”微生物である発酵菌を利用した研究を行っている財団法人です。全国の大学で発行学をやっている先生がたに研究資金を提供し、その成果を報告してもらっていますが、研究テーマは次の3つに分けられます。
  1. 人々の健康問題を発酵で解決していく。    
  2. 汚染された地球環境を発酵微生物で矯正する。    
  3. 発酵手段によって食糧資源を確保する。
 これらの研究をもとに環境問題の解決、地域の発酵産業の活性化、発酵産業の啓蒙など、意義の大きな活動を行ってきました。

石川
 私の家では代々、泡盛を造っています。泡盛は黒こうじ菌を使っていることが一大特徴です。この黒こうじ菌を利用し発酵したもろみを蒸留してアルコール分を抽出したものが泡盛で、蒸留した後に出る蒸留カスがもろみ酸です。沖縄ではこれをカンジュといい、飼料や肥料に使われてきました。

小泉
 沖縄の豚のうまさがミステリアスに思われているけれど、もろみ酸を食べているからなんですね。

石川
 カシジェを食べている豚は赤肉が多いし、流行病にかからないといいます。カシジェに含まれているクエン酸が体の弱い部分を活性化するんです。沖縄では昔からカシジェは体によいとされていますので、なんとか有効活用できないものかと考え、西表島特産の黒砂糖とザラメ糖を少し加えて口当たりのいい沖縄酢を開発しました。

小泉
 泡盛は非常に歴史が古い酒ですね。400年ほど前、琉球王朝がシャム(タイ)と交易をしていたころ、南蛮貿易を通して入ってきた。沖縄には当時からもろみ酸があったわけです。おもしろいのは、一般に夏、酒を造ると腐っちゃうけど、沖縄はあったかいのに腐らない。これは黒こうじ菌が発酵する際、大量にできるクエン酸に殺菌作用があるからです。梅干しのすっぱさがクエン酸ですが、梅干しも腐りません。沖縄の酒造りはクエン酸の存在下でアルコール発酵させる。そして蒸留したあとに残ったのが、アミノ酸や酸味の成分。体にいい成分が全部ものみ酸の中に残っています。そこに沖縄の人たちは昔から目をつけていた。古い沖縄料理は、この液を有効に使っています。沖縄名物、豚のラフティーも昔はまず、もろみ酸に肉を漬け込んだ。
photo
小泉先生が所長をつとめる(財)日本発酵機構余呉研究所。発酵食品の可能性がここで探究されている。
石川
 あえ物にも使われていました。

小泉
 沖縄はクエン酸文化の土地だと僕はいっています。昔から2つのクエン酸を食卓に乗せてきた。ひとつはシークァーサー。ものすぎくすっぱい、夏バテ防止の柑橘類です。この酸味がクエン酸。レモンもそう。クエン酸は新陳代謝にいい。マラソン選手が走りながらレモンをかじるのは疲労による乳酸が筋肉にたまらないようにするのにクエン酸が必要だからです。体が要求する。シークァーサーがない季節の代替えとして飲まれたのがもろみ酸ですね。クエン酸というのは非常に力のある酸です。もろみ酸を煮詰めて濃縮した真っ黒いエキスを切り傷に塗るとすぐに治る。天然の殺菌剤です。

石川
 生野菜にドレッシングとして沖縄酢を使えばO−157対策に有効かもしれませんね。

小泉
 クエン酸はさわやかなのでいろんな清涼飲料に入っていますが、ほとんど化学合成で作られたものです。その点、沖縄酢は天然のこうじ菌で作ったクエン酸ですから吸収がいいし、体にやさしいはず。おいしくて体にいい、医食同源の世界。沖縄の食文化は中国の影響を強く受けていますね。油料理も多い。

石川
 豚をよく食べるし、チャンプルは油をたっぷり使います。

小泉
 中国には「油断大敵」と「酢断大敵」という言葉があります。酢断大敵は、僕の非常に好きな言葉です。沖縄にも共通するものがありますね。ところで沖縄の長寿の秘密はなんですか。

石川
 黒砂糖でしょうか。体を短命にするといわれる油っこい食事は、もろみ酢や泡盛で中和しているんじゃないですかね。もろみ酢はアルカリ食品ですから、酸化した体が還元されます。
小泉
 僕は老化制御と発酵食品の研究をしているんですが、やはりクエン酸の力は大きいと思う。体内に疲れをため、体を酸性に傾ける原因となるピリビン酸や乳酸を消すには細胞内のクレブス回路をスムーズに回す必要がある。クエン酸をとると回路は勢いを増します。僕は県民1人あたりのクエン酸摂取量は沖縄が断然高いと思います。

石川
 老化防止ということでは最近、もろみ酸に含まれる機能性物質もいろいろと見つかっています。

小泉
 石川さんが沖縄酢を開発されたことをたいへんうれしく思います。料理に使っても非常においしい。魚のくさみを消します。

石川
 沖縄酢にはリンやカリウムなどのミネラルも入っています。沖縄酢を飲み始めて2年で80kgあった体重が10kg減り、腹は95cmから82cmに減ったのには驚きました。
photo
昔ながらの製法で泡盛を製造。蒸留したあとに残った"もろみ酢"を「沖縄酢」にリフォーム
小泉
 沖縄酢を飲むと新陳代謝がよくなるということでしょうね。ミネラル分が腸壁を刺激して蠕動運動を促し、便秘を解消する。便通がよくなるとすい臓から胆汁酸の分泌がすごくよくなります。胆汁酸は脂肪を分解する酵素リパーゼの最も重要な成分ですから、脂肪が減ってスリムになる。

石川
 リバウンドもありません。

小泉
 飲みつづけると老化制御にもよい方向に働くと思います。